【大阪府病院協会看護専門学校】小論文 過去問解答例

目次


小論文過去問

「人は利便性を追求し、ゆとりと豊かさを手に入れることができた。」

 

解答例

 

解説

 

ワンポイントアドバイス

「ソーシャルキャピタル」

小論文過去問

「人は利便性を追求し、ゆとりと豊かさを手に入れることができた。」

 

上の一文は、これだけを読めば、問題のない分かりきった文章内容である。ただし、文章が短ければ短いほど、そこには、人それぞれの受け取り方や読み方による多種多様な解釈が入り込むことになろう。

そこで、各自の視点から具体例を示しつつ、この一文に対する批評や反論を600字程度で書きなさい。

(行末での 、 。 は原稿用紙の使い方に準じて処理すること。) 令和4年度 前期一般入試

解答例

 人が利便性を追求してきた結果、手に入れられたゆとりと豊かさの中にスマートフォンが挙げられる。スマートフォンは今や私たちの目覚まし時計として、または仕事や創作物の発信まで全てを行うことができるようになった。たった一つの機械であらゆることができるので、それまで別々の機会で行ってきた時に比べて時間を有効に使うという点でとても便利になった。

 

 しかし私はこのスマートフォンのために失ったものも多くあると思う。例えば、コミュニケーションアプリのおかげで友人と連絡を取ることが簡単になり、知らない人とも繋がることができるようになったが、その分対面で話をすることのありがたさや優先順位が減った。せっかく友人同士で一緒にいるのに全員が端末を見ている学生たちをよく見かける。また日常の中でやることがなくぼんやりするような時に、何気なく外を見たり考え事をしたりするのではなく、つい画面を見てしまう。何かを待つときも同様である。ひと昔前ならぼんやりと色々なことを想像したり、考えていた時間がほとんどスマートフォンを見ることに費やされている。

 

 このようにスマートフォンは利便性に優れた発明品であるが、生身の人間同士の繋がりを深める機会や自分の頭で思考する時間を奪ってしまっているのではないか。自分自身がこの便利な機械を使っているのか、機械に支配されているのか時々振り返りながら付き合っていかなくてはならないと考える。

※小論文の解答例はあくまで看護専門学校入試向けに作成した例であり、書き手の人柄が伝わるようなやや易しめの文章を使っています。

 

解説

小論文は3段落構成を守れ!

 

基本の構成は、

 

1段落…問いに対する答え「主張・意見」を書け

この問題の場合、「利便性を追求し、ゆとりと豊かさを手に入れることができた」ことはぼんやり(抽象的すぎる)してるのでまずはその具体例とそれに対する自分の想い(反対意見など)を考えることだ。

ここでは具体例を身近な「スマホ」にしている。

 

2段落…1段落の答えに対する「理由」「例」「解決策」「そこから学んだこと」を書け

この問題の場合、「利便性を追求し、ゆとりと豊かさを手に入れることができた」→「スマホ」だが、手に入れるものが多い反面失ったものは何か、その例を人との直接的な繋がりにしている。

この2段落目は「理由」「例」「解決策」「そこから学んだこと」等を書くと思っとけばいいが、どれがしっくりくるかは問題のテーマや1段落で書いた内容によるぞ!

例えば、「スマホ」→「SNSでの犯罪やネットいじめ」を書こうとした場合、これは問題点を含むので2段落に書くのは「解決策」を含むべきであるよね。

 

3段落…まとめを書け。出だしは「以上より」などがしっくりくる場合が多い

3段落目は難しくないはずだ。解答例を参考にしてみると良い。

 

小論文がなかなか書けなくて困っている人の多くは2段落目で文字数が多く書けなかったり、思い浮かばなかったりするケースが多い。

その多くは、

「例」や「解決策」を複数挙げて羅列しているだけのケースが多い。

うまく書くポイントは一つの例や解決策を書いたら、それに対する展開をし複数羅列しないことだ!(羅列は減点対象

 

スタディスタジオでの授業は主にこの部分をどうやって考えていくかを行っているので気になる人は問合せてくれ!

 

ワンポイントアドバイス

「ソーシャルキャピタル」

今回紹介するのは「ソーシャルキャピタル」って言葉だ。

 

ソーシャルキャピタルって言葉は簡単に説明すると、「人と人が直接顔を合わせてコミュニケーションする機会を増やしましょう」という概念だ。

 

スマホ等が普及し、人と人が顔を見て直接コミュニケーションを取る量が減ってきているのは知っての通りである。

 

近年の研究では、人と人が直接顔を合わせてコミュニケーションする機会が多い国ほど色々な面で豊かであるということが分かってきた。

 

もちろん経済面でもだ。

 

そこで、日本でもこの量を増やしていこうとする動きがあり、厚生労働省が頑張っている!

 

具体的には自治体レベルでは、お祭りや防災訓練、各種イベントに参加している人数等で測ることができるだろう。

 

会社だったら飲み会に参加している人数とか?

 

看護学校のオープンキャンパスでは昔は先生が一方的に説明するような形が普通だったが、最近は在校生の生徒たちが手伝ってくれたり、みんなを巻き込んでいく形が多くなってきている。

 

これもそのうちの一つだ。

 

つまり私たちが知らず知らずの内にそのような方向性になってきている。

 

当然小論文でもこの直接的なコミュニケーションの大切さが背景となっている問題も多い。

 

大阪医療センター附属看護学校「コロナ禍で人と会えない経験を用いて、人との繋がりについて述べよ」800字

愛仁会看護助産専門学校「インターネット・情報・携帯電話・コミュニケーションのキーワードを使って文章を作れ」800字

清恵会医療専門学院「よりよいコミュニケーションの取り方」800字

行岡医学技術専門学校「ソーシャルキャピタルについて」AO事前課題(調べて書け)

大阪労災看護専門学校「人間にとって有害と思われているものが有益な場合、有益と思われるものが有害な場合について少なくとも1つ例を挙げて書け」

など

 

どうだ?書けそうな気がするだろ?

 

また、これは災害時に関しても言えることだ。災害発生時に実際に助けてくれるのは遠くから時間をかけて来るレスキュー隊ではなく、多くが近所のおじちゃんだったりする。一人で暮らしている高齢者がどこに住んでいるか周りが知っていなければ災害時に救出できなくなる。

 

つまり、災害時に対しても普段から近所との繋がりを強化するために顔の見えるコミュニケーションの量を増やす取り組みが必要なのだな。

 

災害のテーマによっては、このソーシャルキャピタルを背景として小論文を書いていくこともできるので、是非知識として持っておこう!

 

 

ソーシャルキャピタルに関する厚生労働省の記事

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